ビジネスマナーに適した敬語とは、相手との関係や場面に合わせて、尊敬語・謙譲語・丁寧語を正しく使い分けることです。特に大切なのは、相手の動作には尊敬語、自分や自社の動作には謙譲語を使うことです。丁寧に聞こえても、使う対象を間違えると不自然な表現になるため注意しましょう。
ビジネスで使う敬語の基本3種類
敬語は、主に「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類に分けられます。それぞれの役割を理解すると、場面に合う表現を選びやすくなります。
| 種類 | 使う対象 | 例 |
|---|---|---|
| 尊敬語 | 相手や目上の人の動作・状態 | いらっしゃる、おっしゃる、ご覧になる |
| 謙譲語 | 自分や自社の動作 | 伺う、申し上げる、拝見する |
| 丁寧語 | 話し方や文章全体 | です、ます、ございます |
尊敬語は相手の動作に使う
尊敬語は、相手や目上の人を立てる表現です。相手の行動について述べるときに使います。
- 社長がおっしゃった内容
- 部長は会議室にいらっしゃいますか
- 資料をご覧ください
- 明日の予定をご確認ください
「社長が申しました」のように、相手の発言に謙譲語を使うのは不適切です。相手の発言には「おっしゃいました」を使います。
謙譲語は自分の動作に使う
謙譲語は、自分の動作をへりくだって表し、相手を立てる表現です。自分だけでなく、自社の担当者や上司の動作にも使います。
- 私が伺います
- 資料を拝見しました
- 担当者に申し伝えます
- こちらからご連絡いたします
取引先に対して自社の社長について話す場合も、「社長がおっしゃいました」ではなく、「社長が申しておりました」のように謙譲語を使います。
丁寧語は文章や会話を丁寧にする
丁寧語は、「です」「ます」「ございます」などを使い、相手に失礼のない表現に整えるものです。尊敬語や謙譲語と組み合わせて使うこともあります。
- こちらが資料です。
- 明日の午後にお伺いします。
- お問い合わせの件、承知いたしました。
丁寧語だけでも会話は丁寧になりますが、相手の立場を表す必要がある場合は、尊敬語や謙譲語を使い分けます。
ビジネスマナーに適した敬語の使い方
実際のビジネスでは、相手・自分・自社の誰の動作なのかを確認してから、表現を選びます。
| 普通の表現 | 相手に使う表現 | 自分・自社に使う表現 |
|---|---|---|
| 言う | おっしゃる | 申す、申し上げる |
| 行く・来る | いらっしゃる、お越しになる | 伺う、参る |
| 見る | ご覧になる | 拝見する |
| 聞く・尋ねる | お聞きになる | 伺う、拝聴する |
| 知る | ご存じである | 存じる、存じ上げる |
| する | なさる | いたす |
| 食べる・飲む | 召し上がる | いただく |
相手の動作には尊敬語を使う
相手の予定や行動を尋ねるときは、尊敬語を使います。
- 明日は何時にいらっしゃいますか。
- 資料をご覧になりましたか。
- こちらの商品をお使いになりますか。
「何時に来ますか」「資料を見ましたか」でも意味は伝わりますが、社外の相手や目上の人には、敬語にするとより適切です。
自分の動作には謙譲語を使う
自分が相手の会社へ行く場合や、相手の資料を見る場合は、謙譲語を使います。
- 明日、貴社へ伺います。
- お送りいただいた資料を拝見しました。
- 詳しい内容を担当者に確認いたします。
「貴社へいらっしゃいます」は、相手が行く場合の表現です。自分が行く場合は「伺います」とします。
間違えやすいビジネス敬語と正しい言い換え
敬語を重ねすぎたり、丁寧な言葉を誤った対象に使ったりすると、二重敬語や不自然な表現になります。
| 誤りやすい表現 | 適切な表現 | ポイント |
|---|---|---|
| 社長がおっしゃられました | 社長がおっしゃいました | 「おっしゃる」に「られる」を重ねない |
| お客様がお見えになられました | お客様がお見えになりました | 「お見えになる」だけで敬語になる |
| 私がお伺いさせていただきます | 私が伺います | 必要以上に言葉を重ねない |
| ご苦労さまです | お疲れさまです | 「ご苦労さま」は目上の人から目下の人に使うことが多い |
| 了解しました | 承知しました、かしこまりました | 社外や目上の人にはより改まった表現を使う |
| なるほどですね | おっしゃるとおりです、勉強になります | 相手によっては軽く聞こえるため言い換える |
「させていただく」は必要な場合だけ使う
「させていただく」は、相手の許可や配慮を受けて行う場合に適した表現です。何にでも付けると、回りくどく聞こえることがあります。
- 適切な例:許可をいただき、説明させていただきます。
- 簡潔な例:私から説明いたします。
- 不自然になりやすい例:明日、出社させていただきます。
「説明いたします」「確認いたします」のように、相手の許可を特に示す必要がない場合は、謙譲語の「いたします」で十分です。
社外と社内で変わる敬語の使い方
社外の相手と話すときは、自社の上司や社長も自分側の人として扱います。そのため、自社の人には尊敬語を使わず、謙譲語を使うのが基本です。
| 場面 | 適切な表現 |
|---|---|
| 社外の人に自社の上司を伝える | 部長の田中が申しておりました |
| 社内で上司の行動を伝える | 部長がおっしゃっていました |
| 社外の人に自社の担当者を伝える | 担当の者が伺います |
| 社内で取引先の担当者を伝える | 取引先の方がいらっしゃいます |
判断に迷ったときは、「話している相手から見て、自分側の人か相手側の人か」を基準にすると使い分けやすくなります。
メールや電話で敬語を使うときの注意点
メールや電話では、敬語だけでなく、用件を簡潔に伝えることも大切です。丁寧な表現を重ねすぎず、誰が何をするのかが分かる文章にします。
ビジネスメールの例
依頼するときは、「してください」よりも「お願いいたします」や「ご確認いただけますでしょうか」などを使うと、相手への配慮を示せます。
例:
「お忙しいところ恐れ入りますが、添付資料をご確認いただけますでしょうか。修正点がございましたら、〇月〇日までにお知らせください。何卒よろしくお願いいたします。」
ただし、「ご確認いただけますでしょうか」は丁寧な表現である一方、文章全体で敬語を重ねすぎないようにします。短い依頼なら「ご確認をお願いいたします」でも問題ありません。
電話応対の例
電話では、相手の名前と用件を確認し、自分の会社の人には謙譲語を使います。
- 「いつもお世話になっております」
- 「恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
- 「担当の者に申し伝えます」
- 「確認のうえ、こちらから折り返しいたします」
相手を待たせる場合は、「少々お待ちください」だけでなく、「確認してまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか」のように、理由を添えると状況が伝わります。
適切な敬語を選ぶための確認方法
敬語に迷ったときは、次の順番で考えると誤りを減らせます。
- 誰の動作について話しているかを確認する。
- 相手や目上の人の動作なら尊敬語、自分や自社の動作なら謙譲語を選ぶ。
- 「です・ます」や「ございます」を使い、文章全体の丁寧さを整える。
- 同じ意味の敬語を重ねていないか確認する。
- 相手との関係や、社内・社外の場面に合っているか読み直す。
たとえば、「取引先の担当者が資料を見る」という内容なら「資料をご覧になります」、「自分が資料を見る」なら「資料を拝見します」と判断します。まず動作の主体を明確にすることが、適切な敬語を使う近道です。
ビジネスマナーに適した敬語の要点
ビジネス敬語は、丁寧そうな言葉を多く使えばよいわけではありません。相手の動作には尊敬語、自分や自社の動作には謙譲語を使い、必要に応じて丁寧語を加えます。
最後に、「誰の動作か」「社内か社外か」「敬語を重ねすぎていないか」の3点を確認すれば、相手に伝わりやすく自然な表現になります。







